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魔女は忌むべき存在。
その力は強大で、禍々しい魔力で人の心を操り、自然の力を悪しきものに変える。

──はずなのだけれども。

私にそんな力はない。
一応魔女の血を引いているから瞳も髪も黒いけれども、たったそれだけ。
伝説の大魔女は肌も血も真っ黒だったというが、私はかろうじて右手の人差し指の爪が黒いだけ。それもちっとも尖らずに丸い。
だから魔力も少なくて。
あるじ様の役にはちっともたてない。もっとも、私のお仕えするドミトリアス様は、私に魔女としての役割など求めておられないけれども。
だから、私はあるじ様のお家をお守りする。
──主に家政の分野で。
魔女なのに火も起こせないから、熾火をふいごで吹いて料理用の火を焚く。
お料理はこのお屋敷に来てから上手になったと思う。従者の方に美味しいと言ってもらった。一人で森に住んでいた頃は食事なんかどうでもよかったから、ちょっと嬉しい。
でもだんな様に褒められたことはない。残さず食べてくれるから不味くないのだと思うけど、給仕する私に背を向けて食べておられるから表情などは分からない。
それからお掃除。これも自力で行う。
このお屋敷に来た時は、人が住めるとは思えないほどめちゃくちゃな様子だったけれど、今ではどこもかしこもピカピカだ。掃除は私の師匠に叩き込まれたから、ちょっとは自慢できる腕前なのだ。
飾りの類はお嫌いだろうから、殺風景なのは変わらないけれども。
今日も私は家の中を整え、夕餉の支度をしてあるじ様を待つ。
魔女としては役に立てなくても、置いてもらえるだけで私にとっては無常の喜びなのだ。
──あ、お戻りになられた!
慌てて大きな階段を駆け下りる。
あるじ様は開かれた扉の向こうから静かにやってこられる。そのその逞しくも美しいお姿は、いつ見てもどきどきしてしまうけど、そんなこと絶対に知られてはならない。
「おかえりなさいませ」
無論答える声などない。
バサリ、と外套が床に落とされる。次は上着だ。私は無造作に投げ出されるそれらを拾って歩く。
流石に剣だけは御身から離されることはない。あるじ様は生粋の剣士なのだから。
食堂はすでに準備万端だ。
黙ってお座りになられたところで、ナプキンを渡してお手をぬぐっていただく。
それが済むとスープ、肉、パンの順で夕食を召し上がられる。野菜類はお嫌いなのかほとんど食べられない。
黙ったまま無駄のない動きで食事を済まされると、部屋でしばらく休まれる。
その間に私は入浴の支度をする。
お風呂の中だけは、流石に入っていけないけれども、湯から上がられたあるじ様のお身体を乾かすのは、私が唯一魔力を示せる至福の時間だ。
私は風使いの魔女なのだから。魔力は最下級だけれど。
裸で鏡の前に立たれたあるじ様の体や髪に、一番良い風を纏わりつかせて一瞬で乾かす。
傷だらけのあるじ様のお身体はまともに見られないけれど、この瞬間だけは私が一番近しくあるじ様を感じられる大切な時間なのだ。
今日は暑かったから少しだけ風に冷気を乗せてみた。
「……」
やはり無言で部屋着を纏うと、あるじ様はさっさと寝室に向かわれる。
私の1日はこれで終わるのだった。
「おやすみなさいませ」
私は深く頭を下げた。


──あいつは俺を男だとは思っていないのだろうな。

暗い寝室に男のため息が漏れた。




******

以前ツイッターでネタを書いた弱虫魔女の一場面。
この場面は、かなり物語が進んでいる頃合いだと思われます。




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ツイッターで見惚れた、コマさんの黒騎士絵に拙い文章をつけてみました。
イラストはコマさんです。拡大して堪能してください。
無断転載はおやめください。
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2018’07.08・Sun

TANABATA(小ネタ)

たたみます。
「ノヴァゼムーリャの領主」に嬉しいメッセージとAmazonにレビューがつきました!
これらは作者を非常に勇気付け、テンションを上げるものであります。
思わず半年ぶりに小ネタを書いてしまいました。
相変わらず、ワンパターンのツッコミどころ満載ですが、一気書きですので、さらっと読み流してください。
お気に召したら拍手ぽちお願いします!
新連載もよろしくです!

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本年もどうぞ、ぱぁくすと、私、そして私の作品たちをよろしくお願いします。

いか、ノヴァ小ネタです。
よかったら拍手ボタンをポチしてやってください。
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その日、久々の街遊びから帰ってきたレーニエはファイザルの執務室の扉を開けるなり、駆け寄って夫の顎に手を添えて唇を寄せて言った。
「ヨシュア? ***を****したら嬉しい? そんで、****か***で、**せてあげる。だから今夜ははやく帰ってきてね」
ブッフォオ! ガッシャン。
「わー、どうしたの? ヨシュア、くしゃみを我慢したの? あーあ、机の上の書類がびしょびしょだよ。拭かないと」
 レーニエは、妻の凛々しくも愛らしい唇から飛び出した聞く担えない卑猥な言葉に、飲んでいた茶を全部吹き、おまけにカップまで落として机上を台無しにしているファイザルに慌てて駆け寄った。
「ああ、これはひどい。JJ、何か拭くもの持ってない? あれ? JJ」
今日一緒に、王都の下町に連れ出してくれた赤毛の美丈夫は、いつのまにか姿を消している。つい今し方まで一緒にいたのに。
「もう……ヨシュア、ごめんね? あれ? ヨシュア?」
レーニエの大好きな頼もしい夫は、瞳孔を小さくして固まっている。その向こうで白目を剥いているのはジャヌーである。
「れ、レナ?」
「なぁに?」
男装の姫君は無邪気に自分のしていた、シャツのリボンを解いて夫の顔を拭きながら首をかしげた。いつもの彼女の癖である。
「俺の耳がどうかしてしまったようだ。さっき何かいいかけたようだが、レナ、あなたは何を言いたかったのかな?」
「さっき? ああ、だから***を……」
「わああああああ!」
周囲を敵に取り囲まれても、動じたりしない歴戦の勇士は顔を真っ赤にして、ごつい手でその口を覆った。
「ふが……」
「そんな言葉をどこで覚えた⁉︎」
「もがっ」
答えようにも顔の下半分を塞がれ、息もできないレーニエは抗議の証として、小さな握り拳でファイザルの暑い胸をトントンと叩いた。
「あ? ああ! レナ、すまない」
「もうっ! 苦しいよ! 死ぬかと思った」
「そんな恐ろしいことを言わないでくれ、レナ。でも、あなたはさっき」
「ああ、**……」
「だああああああ!」
「な、なに?」
「あなたはどこまで意味がわかって言ってるのか?」
「いや、実はわからない。でもさっきJJが連れて言ってくれた、綺麗なご婦人がたくさんいるお店で、女の人が……うん、あれはきっと好きな殿方に言ってたんだろう」
「……」
「とても魅力的な笑顔でね、最後だけはわかった。今夜きてねって言ってたから、多分愛の言葉だと思って、JJに尋ねたらそうだって」
「へえええ〜」
ファイザルの声は地を這うように低くなった。
「だから、私も使ってみた!」
「……で、奴はどこだ?」
ファイザルの目は部屋の隅で真っ青になっているジャヌーニ向けられている。
「さ、さぁ。俺は存じません。閣下が茶をお吹きになった瞬間、姿を消されてしまわれました」
「殺す!」
「ヨシュア?」
「俺のレナを娼館などに連れて行きやがって、しかもいかがわしい言葉を俺のレナの耳に……くそ!」
「ヨシュア? さっきから何をぶつぶつ。怒ってるの? 約束を守るんなら街遊びは行っていいって言ってくれたでしょ?」
「レナ、さっきの言葉はもう使ってはいけない」
「なんで? 意味と訳を教えて」
「あなたの可愛い耳と口が穢れる」
「は?」
「ジャヌー!」
レーニエの疑問を無視してファイザルは部下に氷の視線を送った。
「は……はっ!」
「すぐにあいつをここに連れてこい! あ、レナはもうお母上の元に帰っていなさい」
「? うん。だけど、今夜はヨミセがあるんだって! JJと一緒に行こうと約束したんだ。ヨシュアも一緒に行こう! 非番だって言ってただろう? みんなで行こう! ヨミセ!」
ニコニコしながらレーニエは執務室を出て行き、後にはどす黒い顔色になった将軍閣下と、茹でた青菜のような様子の部下が残された。



<(希望があれば)続く!>


ヨミセとは多分夜店のこと。
さてレナたんの言ってた***にはどんなセリフが入るのでしょうか?

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